短期的な視野と、長期的な視野。
どちらも大切であるが、その仕事における
立場の違いによって、どちらの視点で利益を
重視するか? は大きく違ってくる。
成果主義や年俸制の特徴としては、
該当期に、どれだけの利益を上げたのか?
を数値で判断するというのがある。
つまり、その期の結果こそがすべてであり、
「来期は頑張ります!」といっても、評価されないから
何の意味も無い。
だから、担当者あるいは、各部署の管理者は、
どちらかといえば、短期的な利益を追求せざるを得ない。
つまり、5年後、10年後のことより、
来月のこと、再来月のことのほうが、彼らにとっては重要なのだ。
もちろん、その考え方自体は自然であり、誰も否定できないだろう。
しかし、会社の経営という意味では、どうだろうか?
5年後、10年後のように、中・長期的な視点で
会社の方向性を決めることができなければ、
永続的に利益を出し続けることは難しいだろう。
中・長期的な視点でのビジネスとは、簡単に言えば
「今は利益にならないが、いずれ、大きな利益につながるような
ビジネスの下地作り」である。
このような「種まき」の段階を、しっかりこなしてきた会社は
数年後、大きな利益を、その畑から回収することができる。
しかし、実際に種まきに参加した担当社員は、
「今年は種まきだけだったので、まだ収穫はありません」
と答えてしまうと、その期は「評価無し」という
悲惨な状況になってしまう危険性がある。
だから、誰もが「種まき」より「刈り取り」を
重視してしまうのだ。
その問題の根源にあるのは、
「種まきの価値を正しく評価できない上司側」にも
あるのだが、そのような状況を放置しておくと、
多くの社員が「まだ育ちきっていない苗も、無理矢理刈り取る」
という行為に走ってしまうため、気づいたときには、
畑には何も残らないし、誰も種を撒いていない、
という「笑えない状況」になってしまう。
難しいのは、そこで撒いた種が、
「本当に芽を出すのか?」を判断する基準の設定だろう。
もしかしたら、芽は出ないかもしれない。
しかし、そのようなリスクは、ある程度覚悟しなければ、
いつまでも既存ビジネスに頼ることになるので、
それ以上の発展は無い。
1つの考え方としては、いわゆる
「種まき」的な業務と、「刈り取り」的な業務の
両方の視点から、その社員の仕事を評価するという
方法があるだろう。
だれもが「自分は刈り取りにまわりたい」と思うだろう。
そうやって
「今期は100本刈り取りました!」
「私は200本刈り取りました!」
と、自分の評価を報告したいはずだ。
だが、一方で、
『じゃあ、種はいくつ撒いたんだ?』
という質問を投げかけてみなければ、
「刈り取りは100本でしたが、種は1000粒撒きました」
「刈り取りは200本でしたが、種まきはやってません。」
という回答が返ってくるかもしれない。
そして、長期的に見れば、前者の社員のほうが、
会社に大きな利益をもたらしてくれるかもしれないのだ。
なぜなら、後者が刈り取った200本の中には、
まだ育ちきっていない苗が含まれていたかもしれないからだ。
一番大切なことは、種まきを担当した社員一人ひとりが
「この種は、いずれ、どんな苗に成長するのか?」
を、きちんと意識して、ビジョンを持った上で、種を撒くことだろう。
でなければ、ただ単に、数をこなすために、種を「消化」する
ような仕事しかできなくなる。
例えば、ティッシュ配りのバイトがあるが、あれは
「ティッシュを減らすこと」だけに集中して配っているとしたら、
本当に「広告効果」を意識した配布はできないだろう。
だとすれば、配る本人一人ひとりが、
「どうすれば、広告効果が最大になるか?」
を考えながら配れるような仕組みを作れば、
もっと、効率的に配れるし、宣伝効果も上がるに違いない。
具体的には、例えば、ティッシュの封入チラシに番号を付与しておき、
どのエリアで配られたものかが、あとで計測できるようにしておくとする。
そして、そのチラシ(や割引券)などを持ってきた客が多いエリア
のアルバイト(つまり配った人)に、臨時ボーナスを与えたり、
ランキングを発表して、時給を上げたりしてみる。
そうすれば、配る側も「ただ単に、数を減らすだけのため」に
配るのをやめて「本当に来店してくれそうな客に絞って配る」
というように、頭を使うようになる。その結果、無駄な配布が減り、
利益も上がるから、その一部を、配る人に還元するという流れ。
そのような「仕組み作り」をしっかり実施すれば、
ただ「無意味に数だけを追い求める」という仕事は
まったく意味がないということに気づく社員が増える。
その結果、担当者一人ひとりが「本当の利益とは何か?」
を、自ら考えて、追求するようになるのだ。
それは「早く数を消化する」という短期的な視点から
「どうすれば利益が生まれるのか?」という長期的な視点へのシフト。
その「視点の切替」こそが、これからの会社経営にとって、
本当に必要とされる「スキル」の1つなのである。
(次回につづく。)
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