若手社員に、長期的な視野を持たせる。
つまり、自分の分担業務が、そのプロジェクト全体の
どのような位置づけにあるのか?
そして、将来的に、どのような方向に進もうとしているのか?
を理解させる。
これは、とても重要なことだ。
これは、単に、仕事へのモチベーションを高める
という意味だけではなく、仕事の本質を捉えさせる
という目的にも、大いに役立つ。
仕事の本質とは、究極的に言えば、
その業務自体が、利益を生み出しているかどうか?
別の言い方をすれば、最終的な顧客にとって、
有益であるか? である。
接客業やコールセンターなど、
完全にエンドユーザーを対象としている業務なら別だが、
多くの設計系、開発系、事務系の業務は、
通常、エンドユーザーに直接触れる機会が
圧倒的に少ない。
つまり、顧客の顔を見ずに、
顧客に向けての商品を作っていることになる。
そのような職場で、ずっと仕事をしていると、
一体誰が客なのか? を見失いやすくなってしまう。
そうなると、直属の上司が、ある意味、
自分にとっての最重要顧客であると、
無意識に考えてしまうのだ。
「お客様は神様です」という言葉があったが、
それと同様に、
「上司は神様です」的な発想になってしまうと、
そこから、新しい発想は、何も生まれなくなる。
なぜなら、部下にとっては、その商品が、
本当に顧客のために有益であるか?
よりも、
「自分が上司から嫌われないか?」
のほうが、圧倒的に、優先度が高いからである。
だからこそ、週報を書くのに、何時間もかけて、
口頭で済むような話でさえ、ご丁寧に、会議用の
資料を、格好良く体裁を整えて作ったりする。
そんなことをしていても、顧客の利益にはならないことは
お互い、十分に承知しているはずだ。
ある経営者は、その著者の中で、この悲しむべき現象を
「ミッション・ベクトル」と表現していた。
つまり、自分自身が、その仕事において、使命感(つまりミッション)
のベクトルを、どの方向に向けているか?
という比喩。
本来、ミッション・ベクトルは、顧客の方向を
向いていなければならない。それこそが、
企業としてあるべき姿。
しかし、若手社員の関心は、企業理念や方向性よりも
「いかにして上司から嫌われないか?」または
「いかにして上司から気に入られるか?」である。
もちろん、それ自体を責めることはできない。
彼らにとっては、それも「生きる術」だからだ。
だからこそ、彼らのミッション・ベクトルは、
顧客方向ではなく「上司の方向」を向いてしまっている。
さらに厄介なことに、そのベクトルに対して
上司は、さらにベクトルで返そうとする。
つまり、上司自身のミッション・ベクトルも
顧客方向ではなく、部下の方向を向いてしまうケース。
上司からすれば、部下に対して、自分の権力や
能力を誇示したい、という気持ちが、必ず発生する。
そのようなベクトルが、上司と部下との間で
ぶつかり合うことで、余計なエネルギーが消費され、
仕事の効率は、驚くほどに下がってしまうのだ。
本来、上司も、部下も、
そのベクトルは、企業理念の方向、すなわち、
顧客方向を向いていなければならないのだが、
それを忘れてしまっては、どんなに社員一人一人が
努力をしても、利益が出るはずが無い。
せっかくのエネルギーも、使う方向を間違えると
まったく役に立たなくなってしまうのである。
だからこそ、仕事の本質を捉えることが大切なのである。
冷静に見る。客観的に見る。
プロジェクトが大きくなればなるほど、
その姿勢は大切だ。
自分が今、やっていることは、本当に必要な作業なのか?
単に、上司のご機嫌を取るためだけの作業になっていないか?
逆に、上司の立場から見て、今、部下に指示している作業は、
本当に、有益な作業だと言えるか?
短期的に、緊急度の高い作業ばかりでなく、
長期的な視点で、もっと重要度の高い作業を
させるべきではないか?
若手社員も、ベテラン社員も、このような、
長期的な視点と、徹底的なコスト意識を持つことで、
無駄な会議、無駄な資料、そして、無駄なストレスが軽減される。
それが「仕事の肝を捉える」ということであり、
それは、会社の利益追求においても、何よりも大切なことなのだ。
常に、自分のミッション・ベクトルの方向性を確認する姿勢。
それを忘れなければ、社員は、自分自身の人生という、
大切な時間とエネルギーを、無駄にしなくて済む。
(次回につづく。)
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