2005年10月26日

社内で「自分らしさ」を求めることのデメリット

辞めるなんてもったいない! 入社3年たったら読む本
大和賢一郎(著)1300円 ISBN4-479-79131-0 大和書房
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仕事に対して「自分らしさ」を求める気持ちは誰もが持っている。
『自分にしかできない仕事』がしたいという願い。
その気持ちが強くなると「会社にいたら自分らしさが出せない」
という感情が芽生え、やがて退職を考えるようになる。

その場合、退職とは事実上「起業すること」を意味する。
なぜなら、似たような業種への転職では、残念ながら「自分らしさ」
は今とそれほど変わらないからだ。

もちろん「転職によって自分らしさを手に入れた」という人もいるだろう。
だが、それが本当に「自分らしいものか?」と言えば、微妙なところがある。
なぜなら、組織とはそもそも「”らしさ”を平均化することで安定を保つ」
という方法によって成立しているからだ。

安定とは「柱が複数本ある」ということである。
つまり「代替品」が必要なのである。
1本ぐらい折れても、すぐに取り替えられる。
そうしなければ、永遠に「いつ折れるか分からない1本の柱」
に運命をゆだねることになる。そうなれば、不安で夜も眠れないだろう。

つまり「安定している組織」とは「代替品として使える社員をたくさん抱えている組織」
とも言い換えることが出来る。
だから『この会社が俺が支えている』とか『俺がいなくなったらこのチームは崩壊する』
というような台詞は本来ならばあり得ない。
もし、そのような「戦力の偏り」があるのならば、
そのスキルや知識をシェアして他の人員に複製していかなければならない。
それがOJTであり、社員教育なのだ。

このような「代替品社員」が量産されることは、
経営者にしてみれば、とても安心できることである。
ある一人の社員が退職したとしても『代わりはすぐに用意できる』
と思えば、無理に引き止める必要もない。

そして、この仕組みは社員にとってもメリットがあると言える。
自分が組織から抜けても、仕事が進むのならば、気兼ねなく抜けられるし、
海外旅行に行くために年休を取ったとしても、周りの社員が
代わって仕事を担当してくれるのならば、何も心配いらないのだ。

つまり「代替品の社員が多いこと」は、サラリーマンが受けられる
大きな恩恵の1つなのである。

だが、このような画一化された方法に違和感を感じるサラリーマンも少なくない。
自分の存在意義を見出せずに苦悩する社員。
『自分の代わりはいくらでもいるとなれば、自分は必要ない人間なのか?』という葛藤。
しかし、それが組織安定のメカニズムなのだから、残念ながらルールを変えることはできない。
だとすれば「そういうものだ」と割り切るか、または
「会社以外のところで自分らしさを探す」という選択を検討するしかないだろう。

だが、時として「社内で自分らしさを強く押し出そうとする社員」は存在する。
つまり、会社組織において『自分がいなければチームが回らない』という状況を好むということ。
本人にしてみれば「自己重要感」を感じることができるから、なかなか気持ちがいい。

しかし、それは「自分の代わりがいない」というデメリットでもあるのだ。
休めない、仕事を振れない、問い合わせはすべて自分に降りかかってくる。
そのようなプレッシャーを楽しめるのならいいが、それでは何のためにチームを
形成しているのか?

人間でもシステムでも「壊れたときの予備」は必要不可欠。
人間に対して「予備」という言葉を使うと、なんとも冷たい感じがするが、
やはり業務をとめることなく稼動させていくためには、人材のストックと代替品の確保が
欠かせない。それは企業経営においては正しい戦略であり、やるべきことなのだ。

私たちが組織の中で働く以上「代替品であるという不満」がゼロになることは無い。
社長でさえ、株主が判断すれば「経営陣総入れ替え」というリスクを背負うことになる。
ビジネスに関わる人間が増えれば増えるほど、それぞれの思惑は複雑に絡み合う。
だからこそ、私たちいち社員は、あまり「自分らしさ」だけに固執していても仕方が無い。
それよりも「気楽さというメリット」に着目し、日々の仕事を楽しみながらこなしていけばいい。
それもまた、幸せなサラリーマンとしての1つの生き方だと言える。

(次回につづく。)

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