社内における監視体制を強化しようとする経営者は、
それが長期的に見れば、会社の利益につながると思っているのかもしれない。
だが、いき過ぎた管理システムは、社員の自己管理能力を奪うことになる。
六本木ヒルズの億万長者として有名な関口房朗氏は、
社員を育てる秘訣について『放っておくこと』だと話している。
つまり、干渉しないことが『自ら考え行動する能力を養うのだ』という考え方だ。
経営者にとって、会社を経営する目的は、人それぞれだろう。
利益を追求するのか、ビジョンを求めるのか、
もしくは、早いうちに自動操縦化して、自分はキャピタルゲインで引退したいのか。
いずれにせよ、経営者に求められるスキルは
「社員が自主的に、自動的に利益を上げるしくみを考える土台を作ること」
である。それができないと、いつまでたっても経営者自身は楽にならない。
一生舵取りを続けなければならない。
もちろん、それが好きならば、それでいいだろう。
だが、時代の変化とともに、求められる価値観も多様化する。
一時代を築き上げた経営者が、次の時代も同じように持ち上げられるとは限らない。
引くべきときは引き、いさぎよく次の生き方を考える。ビジネスでもスポーツでも、
人生の美しさは「引き際が美しいかどうか?」で決まるもの。
社員が自主的に考え、育つ土壌を作る。
それはつまり「自分のあとを担う経営者の誕生を期待する」ということ。
自分のコピーや人形ではなく、自ら考え、方向を決められる人間。
監視体制が強化されたら、社員はしくみに取り込まれ、
身動きできる範囲が極端に狭くなる。
そのような状況では、他社に勝てるほどのアイデアや商品企画が
生まれるはずもなく、ただ監視システムに操作される社員だけが
会社に残る。
システムのメリットは「文句を言わず指示どおりに動くこと」だが、
それは「クリエイティブな発想や感情の柔軟性が求められる現場」においては
大きなデメリットとなる。
奇抜なアイデアは、奇抜な行動から生まれる。
つまり、時にはサボったり、雑談する「あそび」が無ければ、
発想の枠は広がらない。
人に指示に従わないからこそ、既存文化に反発するからこそ、
そこから新しい概念や哲学が生まれるのだから。
社員を機械化したければ、その社員にやらせる作業は、
すべてシステム化して機会にやらせればいい。
そうすれば、人件費も削減できるし、文句を言うことも無い。
前回のコメントで「営業マンをGPSで監視する」という話しがあったが、
極端な話し、それならロボットにやらせてもいい。
決められたとおりのルートを時間どおりに回るロボットを開発する。
SF的な話しだが「アイロボット」などの映画を観ていると、
それも不可能な話しではない。
監視システム強化の進む先は、社員のロボット化である。
だが、社員をシステム化した会社は、
新しいアイデアを社内から吸い上げられなくなるから、
やがて、他社の新商品に勝てなくなり、競争力が落ちる。
そうなると、他社の下請け的存在になるのだ。
つまり「○○を作ってくれ」という要求を満たすのは得意だが
「○○」を考えることができなくなる。
それがシステム化の恐ろしさ。
究極的には「利益を上げること」が目的なのだから、
社員がそれを自覚していれば、監視していなくても勝手に働くようになる。
問題なのは「会社が得た利益をフェアに社員に分配しないこと」なのである。
社員もバカではない。自分で働いた分、それなりのリターンがあるのなら、
サボっているよりも働いた方が得だと考える。お互いにwin-winになればいいだけ。
そのためには「評価の基準と方針の明確化」が欠かせない。
社員の数が増えれば増えるほど「だれが、いくらぐらい、会社に利益をもたらしたか?」
を考えるのが大変になる。
だから「一律年功分配」という安易な評価方法に逃げるのだ。
監視システムを考える時間。それを「社員が自ら本気で頑張る評価のしくみ作り」
に使うことができるか? それができない経営者は、やがて業界の下請け業者に
成り下がることは、まず間違い無いだろう。
(次回につづく。)
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