起業家、経営者にとって、
自らのビジョンを決めることは、簡単ではない。
「自分(自社)は何のために存在するのか?」
「本当にやりたいことは何なのか?」
「夢は何なのか?」
このような問いに、明確に答えられる経営者ばかりではない。
誰もが迷い、そして「やるべきこと」を常に模索しながら、
試行錯誤しているのが現状だ。
サラリーマンが独立して、事業を始める場合、
まずは、その目的を明確にしなければ、方向性が定まらないので、
エネルギーが分散してしまい、上手くいかない。
やりたいこと、やってみたいことがどんどんと溢れてくるからだ。
そうしているうちに、手を広げすぎて、作業が中途半端になる。
虫眼鏡で紙に火をつけることができるのは、誰もが知っているだろう。
あれをやるためには、当然、レンズが大きいほうが有利。
だが、たとえ大きなレンズを持っていたとしても、
その光を一点に集めることが出来なければ、火をつけることは難しい。
逆に、たとえ小さなレンズであろうとも、
光を一点に集中させることができれば、
大きなレンズよりも早く火をつけることは可能だ。
それぐらい「一点集中」は重要な考え方である。
ビジネスにおける経営資源の一点集中。
自分の時間、社員の時間、資本。
それらのパワーを、何に捧げるのか?
常に優先順位を決め、最優先課題に全力を尽くす。
そうしなければ、業界で上位を取ることは不可能。
だが、そうした一点集中のビジネス展開を進めるには、
ビジョンや目的が必要不可欠。
そのビジョンが不明確なまま火をつけようとしても
それは不可能である。
サラリーマンはこれまで、勤務先の会社における
ビジョンに従ってきた。自動車業界なら
「優れた自動車を開発し、世の中に貢献すること」が
ビジョンだったかもしれない。IT業界なら
「使いやすいシステムを開発して、世の中を便利にする」
という企業理念があるかもしれない。
だが、会社を離れ、一個人として
「自分のビジョンは何なのか?」を考えた時、
そう簡単に、人生の目的を見つけることは難しい。
このような状況において、起業家の多くは
「自分が世の中に提供できる価値は何か?」
を問い始める。
自分の能力、得意分野、スキル。
それらを、どう商品化するのか?
サービス化するのか?
そして、それらは利益になるのか?
ビジネスとして成立するのか?
その詳細を検証し、詰めていく。
確かに、このような手法は、ビジネスのネタを
探すための切り口としては有効である。
だが、この考え方では「大きなビジョン」を
見つけることは難しい。
なぜなら、この切り口は
「自分が金を稼ぐための手段」という視点で、
自分のスキルを棚卸ししてしまうからだ。
もちろん、奇麗事を言うつもりはない。
お金を稼ぐことは素晴らしいことだし、大切なことである。
だが、今はあえて「大きなビジョンを探す」という話しを
させてもらうことにする。
大きなビジョンを突き詰めると、究極的には
「社会を良くしたい」というところに行き着く。
今、いわゆる大企業と言われている経営者。
彼らは「自分の会社が、世の中にどんな影響を
与えているか?」を良く分かっている。
交通、飲食、通信、物流、医療。
私たちが人間として生きていくために必要不可欠なインフラ。
その大きな基盤を提供することが出来る組織。それが大企業。
つまり、どんな業界であろうとも「世の中をよくすること」
が究極の目的なのである。
となると、
「世の中を良くする為に、自分はどんな価値を提供できるか?」
という切り口で考えるのも、自分のスキルを棚卸しする時の
1つの手法になる。
それが儲かるかどうか? よりも、
それをやって、日本は良くなるのか?
という切り口。
常にその視点を忘れなければ、
危険な商材や、違法なビジネスに手を染めることはないだろう。
例えばネット上には、休眠口座の売買など、
あらゆる「グレーゾーンな商売」が溢れている。
口座の売買については、詐欺の温床になるという
理由で、法的な規制が適用されるようになっているが、
他にも、このような危険なビジネスは多い。
たしかに、口座売買は儲かるかもしれない。
そして、口座売買に関する知識を持っていれば、
「自分の知識を生かしてネットで金儲けが出来る!」
と考えてしまうのも自然な流れだ。
だが、そのようなビジネスは長期的に見て
かなりリスクが高い。
もっとも「そのビジネスで日本が良くなるのか?」
という問いには、答えられるはずがない。
短期的に高収益を上げるビジネスは、たしかに魅力的だ。
だが、そのようなビジネスの中には
「自分の一生を捧げるほどの大きなビジョン」は
絶対に生み出せない。だからすぐに飽きる。
ビジョンの達成は、場合によっては、
お金儲けよりも優先されることがある。
お金儲けに飽きた起業家はみな、
利益を度外視しても、社会に貢献したいと
考えるようになるからだ。
結果的に、そのほうが楽しいし、周りに喜ばれる。
金銭では得られな喜びが得られる。
それが真実だとしたら、これ以上幸せなことはないだろう。
世の中を良くするために、自分ならどんな価値を提供できるのか?
その視点さえ忘れなければ、道を踏み外す心配は無い。
(次回につづく。)
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