自分でゼロから会社を興した、いわゆる「創業経営者」の
多くは、創業時、死ぬ思いをするほど苦労している。
もちろん、自分自身がそのような過酷な状況を
体験したわけではないので、実際には何ともいえないが、
少なくとも、セミナーや書籍から得られる情報を信じるならば
・資金繰りのことで夜も眠れない
・社員の給料が払えるかどうかを考えると吐きそうになる。
・親会社、取引先から無理な要求、条件を突きつけられ追い詰められた。
などの体験をしたのは、多くの経営者に共通しているようだ。
その苦しさの中にこそ、楽しさもあるのだろうが、
表面的な部分だけを見たら「そんなに楽なもんじゃない」と
考えるのが普通だろう。経営者はサラリーマンとは
比べ物にならないほどの重責を背負っているのだから。
自分の全財産をかけて、ビジネスの世界で勝負している。
逆に言えば、それほどまでに「成し遂げたい何か」が
あれば、その情熱に引かれて、お金も人も自然と集まってくる。
だから、規模を拡大しても成功するのだし、上場して
資金を集めるところまで行けるのだ。
それは私欲を肥やすための資金集めではなく、
ただ純粋に、ビジネスのビジョンを達成したいという
欲求を満たすための資金集め。
そして、世の中の利益と同時に、社員の利益や
株主の利益を考えるようになると、やはり「会社として儲けていく」
ということが欠かせない。
お金が集まらなければ、株主に還元できないし、
社員も養うことはできない。
だから、創業経営者の思いを引き継ぐならば、
すべての社員は「会社の利益」を重視して、日々の
仕事に取り組む必要がある。だが、組織が巨大化すると、
その意識が、だんだんと薄れてくる。
場合によっては、会社の利益よりも「自己顕示欲を満たすこと」
を重視する管理職も出没する。それが一番の問題である。
例えば、会議の席において、自分が何も発言していないとき
『何でもいいから、何か言いたい』という衝動にかられたことは
ないだろうか?
会議での結論は出て、その方向性で、ほぼみんな合意している。
それでも、どこかにケチをつけて、自分の発言を周囲に聞かせたい。
そして「○○さんの指摘は鋭いですね」などと褒められたい。
そのような「自己顕示欲を満たすための場」として会議や
ミーティングが使われてしまうことが、しばしばある。
それが、単なる本人の自己満足で済めばよいのだが、
その無駄なミーティングの間は、他の社員の貴重な時間を
奪うことになる。人件費に換算すれば、どれぐらいの損失を
生み出しているのか? 経営者ならば、とても笑って済ませられる問題ではない。
そして、例えばA案とB案があったとして、ほぼA案で決まりかけているときに、
あえてB案を押してみたりする。自分の発言で会議の流れが変わったことが
楽しいのだ。自分の影響力を実感したいから。
しかし、そうなると「じゃあ、どちらの案がいいか、再度、各自で検討し
調査して報告してください」みたいになると、またA案とB案の比較検討作業に
戻ってしまう。現場社員に対して、その作業を強いることに、一体どんな
意味があるのだろうか?
もちろん、本当にB案のほうが優れていると思うなら、その案を
押すのは悪いことではない。しかし、それほどこだわりがないにも
関わらず「自分の意見を通したい」という理由だけで、
推薦案をひいきするのは、会社にとって、デメリットしかもたらさない。
創業経営者の思想で考えれば、自己顕示欲など、どうでもいいはず。
かつて、自分のプライドをボロボロにされても、それでも
会社を大きくしてきた。それはつまり「会社にとって利益になるのならば、
自分の自我や自己顕示欲は二の次」という意識。
そのような意識のない、ただ「話したいだけ」の管理職がいると、
現場の社員が混乱し、貴重な時間が奪われ、無駄な経費だけが消えていく。
それを自覚していない管理者は、会社にとってもはや必要な存在だとは言いがたい。
つまり「無駄な会議」の本質は「無駄な自己顕示欲」なのである。
話し好きの人間が集まる会議ほど、内容のない「俺の意見を聞け!」
的なバトルに終始する。それで半日、一日という貴重な時間が
奪われていくのだ。それが現場の実体。
一番の問題点は「会議に参加している人間の人件費に対するコスト意識の低下」
だろう。その点については、全ての社員が「経営者の視点」で考えなければ
ならない。確かに「会議で『自分を認めさせたい』という欲求」を満たせれば、
精神的にはすっきりするかもしれない。しかし、そんなことばかりやっていては
いつか会社は潰れてしまう。そうなると今度は「給料で満たせる欲求」が満たせなくなる
のだ。衣食住。人間の根本的な欲求。それを支えているのは「会社の利益」で
あることを忘れてはならない。
(次回につづく。)
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