日本人は、良くも悪くも、形から入ろうとする習慣がある。
例えば、ゴルフを始める場合、最初からフルセットを購入したりする。
たしかに、形から入ることは大切だ。
気分も盛り上がるし「やらなきゃ」という決意表明にもなる。
しかし、起業・独立に関しては、その法則が当てはまるとは限らない。
何かやりたいことがあるとして、まずは現状のまま、
出来る範囲内でこなしていく。それが可能であるかを
検証もせず、いきなり「形から入ろうとする」から失敗する。
高いオフィスを借り、名刺を作り、会社を作る。
法人化は手段であり、目的ではない。
自分がやりたいことが、どうしても「法人格」でなければ
できないのならば、法人化はやむなし。
しかし、まだ利益が上がるかどうかも分からないうちから、
法人化だけを先行させても、余計な手続き費用と法人税が
かかるだけで、金銭的なメリットは無い。
会社を辞めることに関しても、同じことが言える。
退職しなくても、サラリーマンのまま、法人を設立することは可能だ。
辞めることを先行させなくても、他にやるべきことはたくさんある。
例えば、営業などの実業務。
形式的、手続き的なことばかりに目を奪われると、
実際にやるべきこと、本来、優先度の高い仕事を見失いがちになる。
自分の名前が入った「代表取締役」という名刺だけを眺めて
悦に浸っているうちはまだいい。そのうち、何もしなければ
売り上げが無いことに気づいて焦る。名刺で仕事が取れるほど
世の中は甘くない。
ただし、会社を辞め、法人化することのメリットが1つあるとすれば、
それは「自分を背水の陣に置く」という意味で、追い詰めると言うこと。
人間は意志が弱い生き物である。追い詰められないと本気を出せない。
サラリーマンなら、上司や会社から与えられた命令を
守らなければならないという緊張感がある。だから遅刻も出来ない。
納期の遅延も許されない。
しかし、すべてを自分で決められる社長になったら、
やりたくないことは、やらなくてもいい。
ただ、何もしないと、お金が手に入らないだけ。
本当に追い詰められるべき時は、今月の家賃が払えなくなったときだろう。
上司を恐れるか、家賃の支払日を恐れるか。
いずれにせよ、恐怖心が人を支配する。
会社や上司からの束縛を逃れたとしても、
今度は「固定費の支払い」や「顧客からの要望」という
新しい束縛に縛られることになる。
つまり、ビジネスをする以上、何らかの束縛からは
逃れられない。完全なる自由なんて存在しないのだ。
しかし、社長の名刺を持ち、スーツを着込み、
自由気ままに通勤する姿を見ると、あたかも
「何の束縛も無いように見える」のだ。
その姿にあこがれて形から入ろうとする起業家。
代表取締役という肩書き欲しさに、法人を設立する起業家。
そんな形だけの環境に、どんな意味があるというのだろうか。
法人の設立は「器作り」である。
ビジネスを入れておく器。その器の大きさは、
そのビジネスを運営する人間の器に比例する。
つまり、器の小さい人間が、どんなに大きな法人を
設立したとしても、運用できない。扱えないのだ。
そして、もっと大切なことがある。
それは「器に入れる料理を先に作る」ということ。
器は、しょせん器。
その中に、どんな料理を入れ、誰に食べさせたいのか?
それがビジネスモデルの確立であり、ビジョンの選定。
形から入るのが日本人の性質だとしても、
起業・独立に関しては、もっと真剣勝負で挑むべきである。
どんなに高級な器に入れた料理でも、その料理が不味ければ、
誰も食べてはくれない。それがビジネスという料理の難しさだ。
(次回につづく。)
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