「三人寄れば文殊の知恵」という言葉がある。
一人より二人、二人より三人。
人数が多ければ多いほど、その力も比例して大きくなるという
考え方だ。
しかし、実際の会社組織においては、必ずしも、
この法則が当てはまるとは言えない。
例えば、私のような技術系SEが関わっているプロジェクトの場合、
そのプロジェクトに関わる人数が増えるに従い、
全体の開発工数は、二乗に比例して増えていくことになる。
この現象は、具体的に言えば、
8人のプロジェクト:管理工数 8時間
だとすれば、
16人のプロジェクト:管理工数 64時間
という計算になる。
これは極端な例だが、いずれにせよ、
16人だから16時間
という、単純な計算は成り立たない。
それが、巨大組織を管理するということの難しさだ。
プロジェクトに関わる人数が増えると言うことは、
人間一人に対して、関わってくる他のメンバーとの
意思疎通にかかる時間も、何倍にも膨れ上がると言うこと。
例えば会議。5人でやる会議、10人でやる会議、20人でやる会議。
会議に参加する人数が多ければ多いほど、議論に収集がつかなくなり、
何時間も無駄な時間が経過したという経験は無いだろうか?
しかも、その会議に出席している大半の社員は、
「自分とは直接関係が無い話し」で議題が進んでいるとき、
なにもやることがなく、ただボーっと聞いているフリをするだけ。
そのような「無駄な時間」が大量に発生してしまうから、
作業効率が大幅に落ちてしまう。それが大規模プロジェクトの
落とし穴なのだ。
さらに、やっかいなことは、人間は誰しも
「自分がやらなくても、他のだれかがやるだろう」
という、どこか「他人任せ」的な感情を持っている。
これは、心理学的に言えば「社会的手抜き」と呼ばれる。
例えば、綱引きのようなスポーツをやると、
各個人が持っている能力の合計よりも、少ない腕力しか出ない。
これは、本来、一人ひとりが持っている能力をすべて発揮
できていないという証拠である。
「自分一人が力を抜いてもバレない」という安心感から、
つい力をゆるめてしまうのだ。
おなじように、誰かに呼びかけるとき
「誰か!助けてください!」
とか
「みなさん、聞いてください」
というと、多くの人は
『自分じゃなくてもいい』
と思うので、真剣に聞いてもらえないケースが多い。
だから、そのような場合は
「○○さん、助けてください」
のように、個人名を直接名指ししたほうが
効果があるのだ。
このように、誰もが持っている「社会的手抜き」
の精神が、集団組織における「作業効率の悪さ」
を生み出す原因になってしまう。
だから、チーム全体の進捗が悪い時に、
『じゃあ、人を増やせばいいのか』と安直に判断して、
単なる増員だけでその場をしのごうとしても、
うまくいかないケースがあるのだ。
では、どうすればいいのか?
最も大切なことは、現在、プロジェクトに参加している
各メンバーの責任範囲を明確にし、その内容をオープンにして
お互いに把握することだ。
「社会的手抜き」を起こさせないためには
「自分だけ手をぬていもバレない」という安心感を
排除しなければならない。そのためにも、各個人の分担と
責任範囲を明確にすることが、人員を増やすことよりも
最優先されなければならない。
そして、それがうまく機能するかどうかは、
そのプロジェクトの管理者の手腕が問われるところである。
将棋で言えば「遊び駒」を探す能力。
どこかに「遊び駒」的な社員が存在していると、
周りの社員のモチベーションも下げてしまうという
悪循環を引き起こす。
本来、人数が十分に足りているはずなのに、
それでも「人員の不足」を訴えるような社員が出てきた場合、
それは、各個人の担当、あるいは責任の分担、管理方式に
問題がると考えるのが自然なのだ。
それを考えずに、むやみに人員を増員しても、
現場の社員のモチベーションは上がらないし、
逆に「社会的手抜き」を増徴させる危険性もある。
まさに「火に油を注ぐ」とはこのことだ。
それを踏まえた上で、十分に人員配置を検討しなければ、
無駄な人件費ばかりがかさみ、社員にとっても、会社にとっても、
何のメリットも無い浪費になってしまう。それだけは避けなければならない。
(次回につづく。)
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